Hot Pepperミラクル・ストーリー 平尾勇司

Hot Pepperミラクル・ストーリー―リクルート式「楽しい事業」のつくり方

Hot Pepperミラクル・ストーリー―リクルート式「楽しい事業」のつくり方

本書はとても面白い。そしてためになる。

駅頭で配布されていたりコンビニの店頭に置いてあるホットペッパー

あまり飲食に関心が無いのだが、何となく無料マガジンのはしりであることは理解していた。

本書を読むまでは全く知らなかったが、ホットペッパー事業は売上げ300億円、営業利益100億円を計上する脅威の事業だったのだ。

著者の平尾勇司氏は2001年にホットペッパー事業部長に就任。先のような脅威の事業に育て上げた。

その背景には様々なマネジメントの工夫や苦労があり、ホットペッパーの成功を題材に平尾氏の考え実践してきたノウハウを提供するビジネス書でもある。

平尾氏はホットペッパーリクルートがつくった事業ではないという。

ホットペッパーは正社員でない800名の業務委託、3年の契約社員、アルバイトの人たちによって生み出されたのだという。

そのようなリソースを活かしながら事業を成功に導いた平尾氏の経験の中から、

・事業とは何か?

・強い組織とは何か?

・よいチームとは何か?

・すぐれたリーダーとは何か?

そんな問いかけを繰り返すビジネスマンのために、答えを導き出す実践ビジネス読本です。

とのことだ。

本書は、まず「ホットペッパー」とは何か、から始まる。

WEB時代なのに敢えて紙を媒体とした。NTTのタウン情報が街のあらゆる店を紹介するのに対し、ホットペッパーは飲食、居酒屋に的を絞る。

そして紙面は店や料理の写真とクーポン。当初店主は広告掲載料を払ってまで値引きさせられるのか、と抵抗もあった。しかしこれは「クーポンはお客様へのギフト」と定義付け、クーポン文化を醸成した。

オールカラーの分厚い雑誌、しかも無料。全国各地で一斉にコンビニ店等や駅頭で配布される。クライアントには1ページあたり80万円で売られる。

元々リクルートでは360°という生活情報誌を発行していた。しかし戦略的な失敗からホットペッパーへ転換し成功をおさめる。

少々過去の過ちを批判するくだりは、あまり気持ちのいいものではないが、しっかり反省が活かされているのがよくわかる。

少々前置きが長くなったが本書はホットペッパーのサクセスストーリーだけではなく、一種の自己啓発本でもある。

そのなかでも特に印象に残ったことを記したい。

「剣道には小手、面、胴しかない」

営業は変化自在の顧客を相手にするのだから、営業のやり方を型にはめようとすることはどうか?と部下から疑問を投げかけられたときに、平尾氏は、

「剣道には小手、 面、胴の3つしかない。

戦う相手が変化自在だから、技も変化自在なのか?そうじゃない。

相手の攻撃には傾向があって、それに対応する技があるんだ。営業だって一緒だよ」

それは人間の自由な創造性を阻害しないかとの疑問に対しては、

「違う、基礎ができていれば応用ができる。人間の創造性を最大のレベルまでに引き上げるために基礎の型を訓練するんだ...」

何事も基本は大切だ。ビジネスパーソンでいえば、IT、英語、財務の知識が必要といわれているが、もっと基本的な「話す、書く、聴く、読む」の基本スキルができていない人が多い。

基礎訓練こそ何があっても動じない糧となるのだ。そんな当たり前の気付きをもたらしてくれた。

このように本書はホットペッパーの成功体験をもとに様々なビジネスノウハウを著している。

ホットペッパーに関心のある人は、その舞台裏を知る、また多くのビジネスパーソン自己啓発の参考にお薦めの一冊だ。

Hot Pepperミラクル・ストーリー―リクルート式「楽しい事業」のつくり方

Hot Pepperミラクル・ストーリー―リクルート式「楽しい事業」のつくり方