普通の人がこうして億万長者になった/本田 健

本田健氏が2004年に発表した同名タイトルの文庫本化。
本田健氏のライフワークともいうべき「お金持ち」についての研究をまとめた書。
今回は、億万長者と呼ばれる人へのアンケート調査、並びにヒアリング、そして普通の所得層へのアンケート等で比較し、億万長者の考え方、行動等の実態を浮き彫りにしている。

億万長者とは純資産1億円以上を所有する人と定義づけられている。(もちろん私は十万長者であるから対象外)
億万長者と普通層との比較で興味深かったのは以下の点。
億万長者のコメント

私が勤勉に働くのは、お金を儲けたいからではありません。生活のためにお金を稼ぐことはもちろん大切なことですが、それよりも仕事を通して、お客さんに喜んでもらったり、社会に貢献することが、大切だと思っています。お金はその結果ついてくるものだと思っています。

普通層のコメント

私は、お金を稼ぐために、毎日一生懸命働いています。今は何とか人並みの生活を維持することができていますが、今後、給料が減るかもしれないことや、年金がどうなるかが不透明になることを考えると、お金の不安が結構あります。

この意識、現状認識の差はどこから生まれるのか。本書は更に浮き彫りにしていく。

億万長者の人生に見られる10の特徴とは何か。

(1)好きなこと、得意なこと、喜ばれることを仕事にすること
(2)誠実なこと、健康なこと
(3)運がいいこと
(4)危機を乗り越える力があること
(5)人に応援されること
(6)メンターがいること
(7)パートナーといい関係を持っていること
(8)子供の教育を独特に考えていること
(9)長期的な視野を持つこと
(10)決断を上手にすること

億万長者になれるかなれないかの最初の鍵は、自分は億万長者になれないと考える「思考の壁」を打ち破ることができるかどうかにあるという。
そのうえで億万長者はどのようにしてビジネスを選択し財産を築いていったか。要約すれば、自分が好きで、人に喜ばれる仕事をしてきた、に尽きる。さらに誰よりも勤勉に働くことや目の前のことに全力を尽くし、仕事を通して成長することが必要だと説いている。

億万長者が共通して持っている考え方「ミリオネアメンタリティー」について見て行く。
億万長者が成功するために大切だと思うこと。その上位は、誠実であること、健康であること、幸運であること、最終的には自分で判断できること、自分の仕事が大好きであること、とある。人間としても当たり前のことかもしれないが、成功の背景にはスキルや知性よりも、その人の働く姿勢、人間性が大きく影響を与えているようだ。

更に特筆すべきは、億万長者の中には物を大切にしている人が多いということ。そしてそのことを誇りに思っている人が多い。

物を大事に使います。修繕が第一です。時に買い換えが得のこともありますが、それでもなお、修繕します。乗用車は19年間、同じクラウンに乗りました。

意外だったが、決して贅沢三昧ではないのだ。

また億万長者は運を引き寄せる達人でもある。運を引き寄せる方法は以下の4つ。

(1)できることは精一杯やり抜くーーー幸運の神様は努力に引き寄せられる
(2)人との縁を大切にするーーー幸運の神様は、人をとおしてやってくる
(3)時流をつかむーーー幸運の神様は、時代の流れと一緒にやってくる
(4)自分が幸運であると知るーーー幸運の神様は、自分に気づいた人のところにやってくる

そして、億万長者は愛人をつくり派手な生活をしているイメージがある場合もあるが、実態は大きく異なる。多くの億万長者が夫婦関係をとても大切にしている。普通層の人々は仕事のことをパートナーとしない傾向だが、億万長者は全くの逆で積極的にアドバイスを求めるケースも多い。また離婚率も低いとのデータもある。

最後に億万長者にあって普通層にない決定的なものと個人的に感じる事柄。「信念を持って決断する」

億万長者の人たちも、過去に人生の一時点で、リスクをとって、自分の目標に向かって行動することを決断したからこそ、現在の状態があるのだと思います。
そこで億万長者たちに、決断の大切さについて質問してみました。すると、億万長者の二人に一人が、成功するためには自分で決断できることが大切だと答えてくれました。

億万長者は自分なりの人生観をもちつつ、いや持っているからこそ決断ができており、自分で決断できない人は、自分の好きなことや得意なことを表現しないまま、普通の人として平凡に生きる人生になってしまう。
決断が上手にできる4つの方法を以下に記す。

(1)決断をとにかくたくさんすること
(2)普段から準備しておくこと
(3)直観に従うこと
(4)決断の結果を想定して、先回りすること

(4)は、マイナスの事態が発生しないように、事前に先手を打つことができていて、この段取りが普通層との違いなのだ。

以上のように、ごく一般的な普通層である私には厳しい内容ばかりだが、普段の生活から会社での生活で参考になる事柄がとても多く書かれている。
一般人には普段は縁がない世界だが、本田氏の精力的な調査、研究により億万長者像が浮き彫りになっている。今のマンネリ化した生活に刺激を与える意味でも一読の価値は十分にある本だ。