本は10冊同時に読め!本を読まない人はサルである! 成毛眞

今回読んだ本は、元マイクロソフト日本社長である成毛氏の書いた「本は10冊同時に読め!本を読まない人はサルである!」。

「10冊同時に読め!」というのが読書好きの私の心にヒットしたのと、「本を読まない人はサルである!」という超過激なコピーにも正直惹かれた。

どちらかというと、文面のこむずかしい解釈をあまり必要とせず、びしびしと揺らぎ無い本音を記す本が好きであるから、内容はともかく成毛氏の本作はとても楽しく読めた。

さて本書のポイントは以下のとおり。
いささか過激な部分もあるが、本書の内容を的確に記すのであるからご容赦いただきたい。

・私の家のリビングには50冊以上の本が置いてあり、寝室には2、3冊、トイレにも3、4冊の本が置いてある。また、会社の机の上にも数十冊の本が積んであり、カバンの中には通勤用の本が常時2、3冊入っている。

・同時に1冊しか読んでいなければ、そうした箇所にさしかかった途端に飽きてしまい、読書自体つまらないと感じてしまいかねない。だが、複数の本を並行して読んでいれば、ある1冊に飽きてきても、もう1冊は面白くなってきていたりする。
常にいずれかの本はクライマックスを迎えるようにすれば、読書習慣が途絶えることはないだろう。

・旅行や留学で海外へ行き見聞を広めれば、視野が広がるといわれている。だが、ロバは旅から帰ってきてもロバ、馬にはならない、ということわざがある。

たとえば旅行会社の「世界遺産をめぐる旅」などのツアーに参加して、ガイドが説明しているのをボーッと聞いているような人、これはロバである。

中国に旅行し、「これが三国志の"赤壁の戦い”の戦場となった場所か」と頭の中で物語を反芻し感動する人は馬になれる。

井の中の蛙の成功者たちの話を聞いても、たいして得るものはないだろう。その手の成功者の話に感動して憧れているようでは、「庶民」から脱することはできない。

・鼻ピアスをして下着のような服を着ている女性や、茶髪でジーパンをずりおろすようにはいている男性など、信じられない光景を目のあたりにし、「この国はもう終わってるな」と暗澹とした気持になる。いくら専門家が「この国を何とかしなければならない」とテレビで訴えても、ムダだと思う。
こういう人たちは、おそらく本を読んでない。読むとしてもベストセラーやノウハウ本を年に2、3冊というレベルだろう。

・狭い家のどこに収納スペースをつくろうか考えるより、なぜ狭い家に住まなければならないのかを考えるべきである。

・子供が子供でいられる時間はとてつもなく短い。そのかぎられた時間でゲームをするのか、それとも本を読むのかで一生が変わってくる。

・アメリカ人のエリートは「金持ち父さん、貧乏父さん」を読んでいたとしても、絶対に人にはいわない。それどころか「はあ?何それ?」という感じで知らないふりをする。その手の本を知っていること自体で、レベルが低い人間だと見なされる恐れがあるからだ。

・参考にしている書評家;松岡正剛森山和道

・かっこいい本の条件は、いくつかある。
ひとつめはタイトルがかっこいいことだ。「○○ができる方法」「○○力」のようなタイトルの本が並んでいたら、「私はおバカです」といっているようなものである。もし自分の本棚にそのような本があるのなら、隠したほうがいい。

・最近のノウハウ本はサルでもわかるように各項目の終りにポイントが囲みで入っているので、本文を読まなくてもそこだけ読めばいいようになっている。太字で重要な箇所を強調している本もあるのだから、線を引くなどという愚かな行為をする人はいないと信じたい。

・私がもっとも感化された本(社会人編);失敗の本質(野中郁次郎)、ご冗談でしょう、ファインマンさん(リチャード・P・ファインマン)

・さて40代、50代のベテラン社員で働きアリという人はどのような本を読めばいいのか。
そんなものはない。もう手遅れなので、何を読んでもムダである。


こんな感じで心に突き刺さる鋭い指摘でいっぱいである。ちょっと書くのがはばかれるような過激な文もたくさんあり、最後まで一気に読めた。

やわなノウハウ本に一石を投じる本であることは間違いない。とてもお薦めの本だ。