大前流心理経済学 貯めるな使え!  大前研一

大前流心理経済学 貯めるな使え!

大前流心理経済学 貯めるな使え!

景気回復といいながら所得は増えることなく減り続け、個人金融資産は増え続けている。
その額はGDPの約3倍の1,500兆円。
しかも異常な低金利でも、その資産を銀行や郵便局に預けている。

1,500兆円の個人金融資産は、巨大な水がめといえ、この水がめから貯まった水が流れ出したら、インパクトのある経済効果が生まれる。

その水がめを揺さぶるキーワードが本書でいう「心理」なのだ。

日本人の心理を動かすことで経済はどう変わるか。
心理を動かすためにどのような経済政策が有効なのか。
本書では日本人固有の不思議な心理とそれに起因する日本経済と社会構造の問題点を明らかにするとともに、心理経済学に基づいた具体的な提案を行っている。

大前氏ならではの具体的な事実に基づいた現状把握、それから生み出される仮説が全編にわたり論理的に且つ明快に著されている。

今の日本の構造的課題、問題点を理解し、自分なりの解決策を考えさせられる本である。もちろん考えるだけでなく実行しなければならないのは言うまでもないが。

読み応えたっぷりながら、最後まで一気呵成に読めるほど惹きつける内容であった。

本書のポイントは以下のとおり。

・「1,500兆円水がめ」の威力
まず最初に高らかに宣言しておきたいことがある、それは、「わが国は繁栄するための打ち手をすべて手の内に持っている」ということだ。
それは、「カネ、土地、人」である。

・もし国内がダメでも、世界には成長している国がたくさんある。国民の貴重なカネを国内の無駄な投資に向けるのではなく、世界中の成長産業に投資して大きなリターンを得る。これが賢い政府の態度ではないか。

・世界同時株安などの現象に見られるように、ボーダレス経済においては「心理」がお金の動きを大きく左右する。

・日本人が死ぬまで貯蓄を続けるのには、三つの理由が考えられる。一つは漠然とした経済的な不安、二つ目はお金の使い道を考えていないこと、そして三つ目はその根本にあるライフプランの欠如である。

・こうした日本人固有の内向きの心理が、巨大なお金のダムを抱えながら、結果的に日本の長期衰退を招いている。

・日本人の心理を開放する経済政策はどのようなものか。大きくわけて次の七つの方向が考えられる。
(1)金利を上げる
(2)相続、贈与等に関する税制を見直し資産の若年層への移動を早めにする
(3)住宅の建て替えを奨励する
(4)アクティブ・シニアのコミュニティを作る
(5)いくらあれば生活できるのかライフプランを提示する
(6)ベンチャー企業のエンジェルとなる
(7)資産運用を国技にする

・平均寿命で見ると、60歳で定年を迎えた人は25〜30年は老後を過ごさなければならないことになるが、少なくとも80歳までは介護を必要としない人が圧倒的に多い。

・日本の都市の水際を一部利権者から一般生活者に開放することで、日本人の心理が動き、人口が水際へと大移動することになる。

・東京が21世紀の世界首都の一つになる。世界中から尊敬を集めるような、東京にしかない魅力を持つ都市になる。安全で景観も優れ、世界中の人に東京に行きたい、あるいは住みたい、アジアに本社を移したいと思わせるような都市になる。

・資産運用は世界の常識であり、資産運用を考えないのは、日本人だけの不思議な真理なのである。

・本来、政府のやるべきことは、国民のために資産運用を"国技"にし、運用利益を上げて年金資金を潤沢にして、国民の老後の不安を解消することだ。

・あくまでも純粋に利潤動機で60兆円が世界の金融市場に出ていけば、「日本マネー」はオイルマネーも中国マネーも大きく上回る、世界最大のフェアなファンドになる。

・ロシアはいまや世界第二位の産油国(産出量ベース)であり、米ソ冷戦時代のような対立相手でもない。もし日本人の集団IQが高ければ、債務国から債権国に変わったロシアの躍進を直視し、新しい現実を受け入れて次の一歩を踏み出すのは当然のことである。

・日本人が今、意識しなければならないより大きなパラダイム変換は、アメリカが日本よりも中国重視にシフトし始めたことである。

・「小さな政府」が経済を復活させる理由は簡単で、「大きな政府」で「官」の関与が大きくなればなるほどシステムが非効率化し、産業が国際競争力を失うからだ。

・21世紀は、突出した個人を何人抱えているかで国家の強さが決まる時代なのである。逆に言えば、突出した個人を創ることのできる教育こそが求められているのである。

・新しい経済では心理が極めて重要な要因になっているが、なかでも日本ほど国民の心理によって経済が大きく動く国は他にはない。

大前流心理経済学 貯めるな使え!

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