破壊的トレンド/渡辺弘美

ウェブを変える10の破壊的トレンド

ウェブを変える10の破壊的トレンド

ニューヨーク在住の著者が、アメリカIT分野の動向や技術動向を調査する仕事の中から、日々膨大なニュース、ブログを読み、全米各地で行われるカンファレンス参加、シリコンバレー、ニューヨークの注目企業の訪問の中から蓄積したIT界のトレンドを紹介。

ネットによるボーダレス化を背景に、IT分野の新たな潮流が日本にも迫っているという危機感と新たな潮流を生み出せるという可能性に期待し記した渾身の一冊である。

日本のこれからの姿でもあるかも知れないアメリカのIT界トレンドを知る内容の充実した本。記述も平易であり写真も多く読みやすい。

文末にも記載しているが、アメリカだけでなく日本からもこのような先端技術を世界に先駆けて発信できる技術者の育成も急務であろう。

0.破壊的トレンドとは何か
数多くの破壊的なイノベーションの登場
その背景にあるユーザー・エンパワーメントへの時代変化

1.ダイレクト ユーザーを直接つかみ、ロックイン
ユーザーがネット中の情報と直接つながることを好み、 またネット側もユーザーと直につながることを求めている
ユーザーが欲しい情報を探してウェヴサイトを さまよっていた環境を塗り替える可能性を秘めている
企業とユーザーを直結する「フィード」feed
米国でホットなウィジェット(Widget
顧客のもとへ出向くためのツール

2.フリー 「潤沢経済」時代のビジネス
情報技術(IT)の資源当たりの 単価が無料(フリー)に近くなり、 「潤沢時代」の時代に突入した
DVDレンタル→オンラインDVD配信
ウォルマート→アマゾン
情報技術資源が限られていいた 「稀少経済」の時代が終焉を迎え、 ユーザーへ主導権が変移
原則禁止→原則自由へ
自分(企業)でなくあなた(you)が 最も良いものを知っているという ボトムアップの立場
管理不能
とりあえず製品をリリースするという β版的なアプローチに舵を切った方が良い

3.クラウドソーシング みんなの知恵を利用する
他人任せになるならば、必然的にアウトソーシングという概念に帰結する
「潤沢経済」下では豊富なインフラを生かし、 面識がない多くの人の知恵や知識を 活用することが可能になる
大衆の知恵をビジネスにとりこむ
クラウドソーシング(crowdsourcing)
大衆から知識や知恵を調達する
クラウドソーシングの典型技術;ウィキ(Wiki)技術
ウィキペペディア;ウィキ技術の応用例
コンテンツ・レーティング;大衆からの評価を集める
集合知を取り入れるほどサービスが賢くなる
サービスが賢くなればユーザーが増え、 情報が増えて集合知が集積する という好循環を形成する

4.プレゼンス リアルタイムな情報を生かす
新聞社のDBはストック型の情報
配信されない、されていても垂れ流しになっていたリアルタイムのプレゼンス情報が価値を持ち始めようとしている
今の私を伝えるプレゼンス情報
米国でホットなプレゼンス情報は2008年の大統領選に向けたキャンペーン
候補がリアルタイムに今を伝えている
位置情報を元に都市交通システムの 効率化を図ることができる
駅の入場者数に応じて 列車の本数を変える
従量制の自動車保険料 (GPSを使い、距離、時間帯、危険地域の有無で保険料高低)

5.ウェヴ・オリエンテッド すべてのサービスをウェヴ上で提供できるか
ネットの登場でコミュニケーションやソーシャルネットワーキングのあり方が変容
知識習得や知の集積が国境を越えて容易に行われるようになった
更に手元のコンピューターで行っていた情報処理をネットワーク側で済ますことが可能に
開発が激しWEB OS
PCは昔のダム端末(メインフレームから流れる文字列の表示機能のみ)
WEB オフィス スイート戦国時代
グーグル
ゼンター

6.バーチャル&リアル 「仮想」は「非現実」にあらず
セカンドライフで火がついた仮想世界
3Dだけでなく、360度方向デジタル写真、3Dプリンター、拡張現実感(AR)
仮想と現実を橋渡しするテクノロジーが続々登場
デジタル・ネイティブ世代には非常にポピュラー
3Dプリンタ-で仮想世界からリアルな「モノ」を生む

7.ビデオ 映画やTVの行く末は
ユーザーが製作した動画がIPに乗って世界を駆け巡るようになった
映画、TVの配信手段もネットを選択
大量に流れる膨大なコンテンツはメディアを、そしてユーザーをどこへ連れて行くのか
IPTVアプリの開発競争は進む
TVよりも携帯の日本の若者

8.インターフェース よりわかりやすく、使いやすく
人間の視覚に直接訴えるインターフェースが開発
文字情報中心の入出力インターフェースが破壊的に塗り替えられようとしている
人間とコンピュータをもっと近づける
情報の視覚化技術
IBM メニューアイズ データを16種類にビジュアル表現
電話による音声認識サービス
3次元加速度センサー
Wiiリモコン
Wiiリモコン+セカンドライフで訓練シュミレーター構築
マルチタッチスクリーン
iPhone
アナログデバイスのデジタル化
スマートペン
レーザー光による仮想キーボード
モノつくりは「ソフトウェア中心」の発想が必要

9.サーチ ポストグーグルの潮流
グーグルの「全世界のあらゆる情報を整理する」という野望は道半ば
次世代検索の3つのアプローチ
自然言語で可能な検索
検索結果の視覚化による「より良いUI」
特定分野の情報検索を得意とする「垂直型検索エンジン」

10.セマンティック・テクノロジー 意味を理解し始める時代へ
コンピュータ-は入力情報の意味を理解していない
情報の意味や関連性を理解、それに基づいた処理を行うのがセマンティック技術
データの統合、情報検索、情報共有分野で大きな変革をもたらすと期待
「情報化社会」から「関連性社会」へ

11.破壊的トレンドの対処法
市場を塗り替えようとしている大きなうねりをとらえておくことが大事
海の向こうの出来事では済まされない
破壊的トレンドをつくり出すエンジニアの育成も重要

ウェブを変える10の破壊的トレンド

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