資源世界大戦が始まった―2015年日本の国家戦略/日高 義樹

資源世界大戦が始まった―2015年日本の国家戦略

暴騰を続ける石油と暴落しつづける米ドルによる世界的な混乱からもわかるように、二十世紀の国際社会を動かしてきた石油とドルの時代が終わり、世界の国々は資源をめぐる熾烈な争いを始めているという。

これを著者は新たな資源世界大戦の勃発だという。

本書はアメリカに長年滞在している日高義樹氏が、今の国際社会で起きている情勢を世界的な視点から整理し、これからの日本がどうあるべきかが著されている。

なかなか新聞などでは得られない貴重な事実や、著者独特の情報網から仕入れたであろう貴重な情報もちりばめられ、今の国際社会の現状や課題が分かりやすくまとめられている。

昨今の石油の上昇がこれからの日本や世界にどうのような影響を及ぼすか、興味のある人にはお勧めの一冊だ。

資源世界大戦が始まった―2015年日本の国家戦略

資源世界大戦が始まった―2015年日本の国家戦略

□本書のチェックポイント□

アメリカの専門家が推定するところでは、北極圏の海底に眠る石油の量は現在、世界中に埋蔵されていると推定されている全石油量の五分の一、一千七百五十億バーレルにのぼる。地球温暖化の結果、北極圏の氷が急速に溶け始め、こうした地下資源が世界各国の関心を集め、資源獲得競争の状況が出現したのである。

第二次世界大戦が終わって半世紀、日本は最新技術を持つ優秀な軍事国家になった。日本はアメリカの核の傘下のもとで、「平和国家」として存在し、軍事的な問題がタブーとされてきたが、実際にはいまや世界一流の軍事力を持っている。技術的にも、アメリカをはじめ世界の一流軍事国家に引けをとらない能力を持ち始めている。

・今は中国の安い労働力がアメリカ企業の利益を生み、中国人のアメリカの土地不動産に対する投資がアメリカの好景気をおし進めている。この好景気を続けることがアメリカの最優先事項なのだ。

プーチン大統領は、石油の値段が高騰するなか、ふんだんにあるロシアの石油を国有化し、石油を武器にロシアの再生を夢見ている。

・世界の経済が拡大しつづけ、石油の消費が増えても供給が追いつかない。アメリカの問題はここから生じてくる。アメリカの世界戦略、アメリカ経済、アメリカの生活を動かし支えて来たのが石油の安値だったからである。

アメリカが日本を「アジアにおける最も大事な友人だ」を言い続けてきたのは建前だが、別の意味で本気だった。アメリカの利益のために大事だったのである。