野球現場主義/松永怜一


著者の松永怜一氏はロサンゼルスオリンピックの野球で金メダル獲得時の監督をつとめるなど、アマチュア野球の功労者として、2007年に野球殿堂入りした。
松永氏は1931年に生まれ、福岡の八幡高校から法政大学に進学し、神宮球場でプレー。卒業後は付属高校である法政一高を皮切りに堀越学園、法政大学、住友金属の監督を歴任。法大では田淵、山本、富田等、オールドファンには懐かしい名選手を育て、法大野球部の一時代を築いた。

高校野球ファンには、NHKの解説でおなじみかもしれない。

本書は野球伝統入りを機に、それまでの野球人生を振り返りながら、指導者としてあるべき心構え、姿勢について、松永哲学が余すところなく著されている。また野球ファンにはとても懐かしい物語も多数あり、とても楽しく読める。ぜひ読んでいただきたい一冊である。

□本書のチェックポイント□

・まず、われわれはキャッチボールを野球技術の基本として、キャッチボールやトスバッティングを練習の一環と考え、初歩から腰を据えてかかるべきではなかろうか。

・あとになって聞いたのだが、甲子園で試合後の挨拶を終えた選手が互いに歩み寄り、握手を交わしたのは、この時が初めてだった。

・おまえが一生懸命やっているのはよくわかる。だが、グランドでプレーするのは選手なんだ。おまえは、それに手を差し伸べてやるようにしなければダメだよ。

・監督は選手の野球人生を左右すると存在と言っていい。監督の指導法、接し方次第で、選手の野球人生は明らかに変わる。

・私は「名選手よりも人間を育てよう」とグランドに立ってきた。どんなに卓越した技量を備えていても、人間が立派でなければ名選手とはいえない。

・正しい練習のノウハウを教え、自己成長を促すような指導をしてやれば、心身ともに逞しくなった選手たちは自分の力で卵の殻を破ることができる。その可能性を広げ、一貫指導してやることが、指導者の本当の役割なのである。

野球現場主義

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