日本は没落する/榊原 英資

日本は没落する/榊原 英資
バブル崩壊から立ち直り、世間的には景気回復と言われているが、楽観的になっている日本人に対して警笛をならす。タイトルも過激だ。
日本は高い技術力を誇り、世界経済を牽引してきた。しかしながら最近は同じアジアの韓国、中国、台湾、そしてインドの追い上げが激しい。いつまでこの技術的優位を保持できるのか。
日本の教育の弱体化も問題だとする。
現代日本が抱える種々の問題に対し強い危機感を持って官民双方で改革をしていく必要があると、著者は強調する。

今の経済は、過去の歴史の流れの中で見ると、数百年に一度の大転換期を迎え、人類にとって初めて経験する段階だという。
18世紀のイギリスから始まった産業革命を端緒に世界を一変させた産業資本主義の時代は20世紀をもって終焉。今はポスト産業資本主義の時代に移行している。

産業資本主義の時代は「お金を追いかける」時代でした。そしてポスト資本主義の時代は「お金が追いかける」時代です。

今は世界的に金余りが続いている。様々な金融技術が開発され、より高いリターンを求めてお金が世界を席巻する、そんな様相だ。
お金が貴重だった時代から新しい時代に必要なものは何か。

私はそれを「技術(Technology)」「知識(Knowledge)」「情報(Infomation)」であると考えています。それこそがマネーを追いかけている対象であり、またマネーを動かしている主でもあるのです。

そしてこの三つのキーワードを支えるのが教育だという。

さらにポスト産業資本主義への移行段階での大きな変化のもう一つは「欧米からアジア」の歴史な流れ。ゴールドマンサックスのあるリポートでは、2040年には中国がアメリカを抜いて世界最大の経済規模を持つようになり、インドも日本を抜いて世界第三位になる、と予測しているというのだ。そして著者もこの予測を指示する一人だ。
このような歴史的変換期の中で、日本は世界の流れに逆行する政策を繰り返す。

私は「日本は今、没落へと向かいつつあるのではないか」という強い危機感を感じています。

日本が世界に誇っていたのは技術力といわれる。その力量が衰えている中で、アメリカはIT技術で大幅に先行する。ビルゲイツスティーブ・ジョブズのような天才的な技術者も排出する。翻って日本はどうか?

一言で言えば日本には「技術」がなかったのです。

と著者は切り捨てる。

このように今の日本の抱える多くの問題を具体的に列挙し批判を重ねる。
文章は読んでいいて小気味よいが、この国の将来を考えさせられ暗澹とした気持ちになってしまった。

しかしながら今の日本の置かれた状況を客観的に把握するには丁度良い本であると思う。


日本は没落する

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