ワーキングプア 日本を蝕む病/NHKスペシャル「ワーキングプア」取材


ワーキングプア」。働いても働いても豊かになれず、生活保護水準以下の生活を強いられている人たちが大量に生まれている。
それはなぜか。NHKの取材で生々しい実態が浮き彫りになっていく。
本書は、かつてNHKで放送された「ワーキングプア」に関するドキュメントをまとめたものだ。
東北のとある地方。勉強に部活にと懸命に、そしてまじめに高校生活を過ごした若者の就職口がないという。

この村で一番良い働き口は自衛隊です。公務員だから安定しているんです。それ以外、目指す就職口はありません。去年、合格した人はヒーローでしたよ。

さらには、

うちの学校にくるのは、パチンコ店の募集ばかり。パチンコ店は月給20万円を超えるから待遇はいいんです。

働かない若者の問題も取りざたされているが、実態は働くところが無いのか?それが現実のようだ。
地方だけではない。東京でも日雇い派遣の登録が急増しているという。携帯で募集され応募し、一生懸命働いて僅かな給料を得るが、アパートの家賃も払えないレベルで、漫画喫茶等で暮らす。
こうなった背景は何か?
よく言われているのは小泉内閣が進めた構造改革による格差拡大という指摘。しかしそれを否定する意見もある。

そもそも長期停滞が続いた背景には中国などアジア各国の急速な追い上げがあるからです。中国と同じものを作っていても競争には勝てないわけで、高付加価値化が必要なのです。そういう意味で構造改革が求められているのです。とくにサービス業での構造改革が進んでいないことが、経済停滞の大きな原因です。構造改革をしたらワーキングプアが増えたという意見がありますが、まったく逆です。つまり小泉政権になるまでの歴代政権は、過去の高い経済成長の成功体験にあまりに依存し、経済社会環境の変化に対応した十分な改革をせずに放置してきた。それが事態を深刻化かせたのです。

ICU八代教授の言葉だ。
このような傾向は、地方、女性、高齢者そして若者を中心に蝕んでいる。
人件費削減のため正社員を非正社員化した最大の犠牲者。反面、企業は好業績を続けている。表面だけ見ずに、その背景をしっかりと理解する必要がある。
そうでないと、いずれ厳しい「しっぺ返し」を受けるような気がする。
自分だけ満足、やはりそれでは社会の中で生きてはいけない。

現在の日本を支えている労働力はほとんど非正規雇用です。社会保障はどんどん削られている。つまり、そういう合理化をして「国際競争力が強い」と言う企業に、企業としての誇りはあるのでしょうか。そして市場に任せさえすればうまくいくといって役割において何もしない政府。これが働く貧困層を生んでいるのです。

現在の日本の労働力を支える非正社員、そして外国人。結果、好業績が続いているが本当にそれで良いのか?

自分の生き方、そして社会貢献。これらをどうしていくのか自分なりに考えていきたい。
そう深く考えさせられた一冊だ。

ワーキングプア―日本を蝕む病

ワーキングプア―日本を蝕む病