ローカル線ガールズ/嶋田郁美


久々に心温まる本を読んだ。
「ローカル線ガールズ」、著者は嶋田郁美。

ローカル線とは福井県を走る「えちぜん鉄道」のことをここでは指す。

通称「えち鉄」。全長60kmに満たないローカル線で、路線は日本海側の三国港、山間部・勝山への2本のみ。ほとんどが一両編成という、典型的なローカル線だ。

著者の嶋田氏は、このえち鉄の現役「アテンダント」。

えちぜん鉄道の歴史を簡単に記すと次のような内容だ。

2000年、2001年と連続してえち鉄の全身である京福電鉄が、死傷者を出す事故を起こし、国土交通省等から事実上廃線とせざるを得ない厳しい処分が下された。

京福電鉄側はバスで代行をしていたが、鉄道の利便性を優ることはなく、近隣住民達からの鉄道復活気運が高まり、最終的には復活要望の署名も7万名も集まった。

その結果、地元勝山市が中心となり、第三セクターとして「えちぜん鉄道」通称「えち鉄」が誕生した。

このえち鉄誕生とともに導入された新しいサービスの一つが「アテンダント」である。

多くの赤字を抱えるローカル線は、運転手のみのワンマン運転が主流であるが、えち鉄は敢えてアテンダントの導入に踏み切った。
田舎鉄道の欠点を逆手にとり、「当社には、全国的にも珍しい女性アテンダントがいます。きめこまかやかなサービスをいたします」というアピールポイントに変えてしまおう、といことだ。

多くの人はローカル線のアテンダントと聞いて何をするのかピンとこないと思うが、著者をはじめとしてえち鉄のアテンダントは、とても素晴らしい活躍をしている。

ローカル線でならではの、きめこまやかなサービス。それは、切符の販売(無人駅が多い)、お年寄り等の乗降時のケア、観光案内、乗客への気配り、クレーム応対等々多岐にわたる。

最初はその存在が認知されず、「アンタは要らない」などと言われ傷ついたこともあったそうだが、アテンダント達はまさに改善により、多くのファンをつかんだのだ。

アテンダント同志のコミュニケーション不足を補う連絡ノート、情報交換ノートを用意し、お客様へのサービスに偏りが起きないようにすることや、沿線の観光情報等について、山とか勝山の名物等の項目ごとにチーム制で詳しく調べる活動をする等、とても健気な努力を積み重ねてきたのだ。

更には「常に「目配り・気配り」を心がけ、お客様のちょっとしたシグナルを見逃さないようにするといった、素晴らしいCSマインドを持っている。

本書は単なる読み物だけでなく、顧客サービスのあり方を知る良書でもある。

また本書にはアテンダントの写真も多く掲載されているが、彼女たちの笑顔が実にいい。
航空会社のスチュワーデスの造られた笑顔とはレベルが違う。心が温まる笑顔だ。
仕事で顧客と直接接する機会のある人にもお勧めだ。

かみさんの実家が北陸なので、今度帰省する時は、ぜひえち鉄に乗り、えち鉄ガールズに会いたいものだ。

ローカル線ガールズ

ローカル線ガールズ