ラジオな日々/藤井青銅


今やラジオだけでなくテレビでも活躍している藤井青銅氏による、ラジオの放送作家デビューから一定の成功をおさめるまでを著している。
時は80年代。70年代がラジオとフォークソングを中心とした音楽が一体であったが、80年代はアイドルやアニメだった。
まさに時代の潮流にのって藤井氏はサクセスストーリーを駆け抜ける。
デビューはニッポン放送で制作されていた「夜のドラマハウス」。
毎週一つのヒット曲がテーマとなり、その曲をタイトルにしたドラマ番組だ。
多くの駆け出し放送作家が競って原稿を書き、局のプロデゥーサーが選抜する。いわば毎週がオーディションみたなものだ。
藤井氏は何回かのチャレンジを経て、ようやく採用。

1979年(昭和54年)5月29日火曜日オンエアーに「ビューティフルネーム」というテーマのドラマで、ぼくはようやく放送作家デビューすることになった。

デビューまでの試練を乗り越えると、いつからか毎週コンスタントに採用されることになる。
そしてようやくつかんだメジャー番組のチャンス。
解散したばかりのキャンディーズ伊藤蘭が出演する月〜金の10分番組。タイトルは「伊藤蘭・通り過ぎる夜に」
なぜ解散したとはいえトップクラスの芸能人に新人放送作家だったのか。

「いかに元トップアイドルでも、女優・伊藤蘭としては新人。なので、これまでの芸能界に染まっていない新人作家と一緒に番組をつくっていきたいと向こうが言うんだ」

運も実力のうちというのだろう。当時の伊藤蘭のネームバリューからすれば藤井氏にとって大きく飛躍するチャンスだったことだろう。
更に山口百恵の引退に合わせ彗星の如く登場したアイドルの番組も受け持つことになる。しかも複数でなく(伊藤蘭のは2人だった)単独で。

「アイドルは誰ですか?」
と聞くと、宮本(ニッポン放送ディレクター)は去年デビューした新人の名前を言った。
松田聖子

番組名「松田聖子・夢で遭えたら」。もちろんラジオドラマのコーナーもある。
1回30分の番組。松田聖子の成長もあり藤井氏のサクセスストーリーは一層飛躍する。
ニッポン放送得意のアニメシリーズ。映画の公開と合わせ声優を登場させるラジオドラマや、監督等をスタジオへ呼んでのトーク番組。これもアニメブームの波にのり好聴取率をマーク。
藤井氏の地位は不動のものとなる。
しかしそんな時代はいつしかドラマハウスの終焉を象徴としラジオドラマのレギュラー化は無くなった。
団塊ジュニアの少し上の世代は試験勉強の際にラジオの深夜放送に世話になった人が多いのではないか。たとえ試験前でなくでもお気に入りのDJが登場する日は遅くまで起きて聞いていたものであろう。
私などは、3時からやっていた歌うヘッドライト走れ歌謡曲なんていうトラックドライバー向けの番組も楽しみに聞いていたものだ。
そんな楽しかったラジオの舞台裏の実態がわかりとても楽しい本である。所々に登場するDJやアイドルの名前がとても懐かしい。青春時代をラジオとともに過ごした方におすすめの一冊だ。

ラジオな日々

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