汗出せ、知恵出せ、もっと働け!/丹羽宇一郎


伊藤忠商事会長である丹羽宇一郎氏の講演をまとめた書。
丹羽氏は1998年に伊藤忠商事の社長に就任。当時はバブル崩壊後で大手商社も危機であったが丹羽氏は当時4,000億円の不良債権を一括処理し、翌年には史上最高益を計上するなど卓越した経営手腕は広く知られたところである。
そんな丹羽氏であるから講演の要請は多く、こうして一冊の本にまとまられるほどだ。
もちろん丹羽氏が考え行動していることは伊藤忠商事のことだけでなく、日本や世界のことを考えてのこと。
特に日本に対しては本書の題名でもある「汗出せ、知恵出せ、もっと働け」とあるように厳しい提言が多い。
丹羽氏の主張する背景は、日本は資源が無い国であり、これからも立国していくためには「人と技術」を資産として外貨を稼がなければならない、という強い危機感だ。

人間が地球上で生きていくなかで、どうしても欠かせないのが三つあります。人類生存の三大要素です。
一つは、食糧です。食べ物がなくなったら困ります。二つ目はエネルギーです。三つ目は水です。果たしてこの三つを日本はもっているでしょうか。じつは、この三つのうち、どれも日本にはないのです。

水がない、ということに疑問を持つかもしれないが、麦一キロを育てるのに二トン、牛肉一キロで二十トンの水が必要であり、そのほとんどを輸入に依存している日本は間接的に水を輸入しているのと同じことなのだ。
こうした生存に必要な三大要素を外国に依存せざるを得ない日本はどのようにして手にいれていくか。
やはり日本の強みでもある「人と技術」を一層強化するしかないと述べている。
そのためには教育にも一層力を入れる必要があるが、一方で教員の給料減らしなど逆方向の施策が行われているのが日本なのだ。
前にも後にも人材の育成、そして人材がもたらす技術の向上。まさにこれからの日本に必要な要素であると丹羽氏は再三にわたり強調している。

人材の養成をしなければ、日本は世界に負けます。技術にしても、国内に終始するのではなく、海外のそれをうまく使って発展させていくこともできます。強くならなければ日本の将来はない。

明治維新から約140年が過ぎた日本。まさに歴史の変換地点にいるような気がしている。維新で活躍した坂本龍馬のような人材(極端か?)が必要とされているのかもしれない。
教育というものに真剣に考えるきっかけとなる一冊である。

講演録ベストセレクション 汗出せ、知恵出せ、もっと働け!

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